パーキンソン病とは

1817 年にイギリスのジェームズ・パーキンソン医師によって発見され、1887 年にフランスのジャン=マルタン・シャルコー医師によって「パーキンソン病」と名付けられた疾患です。

神経伝達物質であるドーパミンは、やる気や多幸感を得るという作用だけでなく、運動の調節にも関与しています。パーキンソン病では、ドーパミンが不足することにより、大脳基底核と呼ばれる脳領域の神経活動に異常が生じて発症します。

パーキンソン病は中脳の黒質緻密部(こくしつちみつぶ)のドーパミン神経の脱落・変性による進行性の神経変性疾患です。黒質は大脳基底核の一部で実際に黒く見える組織であり、左右の大脳半球に1 つずつあります。成人の脳は1,000g 以上ありますが、このうち黒質が占める重量は二つ合わせて1g程度しかありません。

なぜパーキンソン病に罹患するかに関して、はっきりとした原因に関しては未だ解明されていません。近年の研究によってアルファ-シヌクレインというタンパク質が凝集して発症するところまでは分かってきましたが、なぜこのタンパク質が凝集するのかについては不明のままです。日本には現在15 万人以上の患者がいますが、高齢になるほど罹患率が高くなるため、今後さらに患者数が増加すると予想されています。

パーキンソン病の症状

運動症状

4大徴候 TRAP

それぞれの英語の頭文字を取って「TRAP」と呼ばれる4大症状があります。

Tremor 振戦(しんせん) 何もしていないときに手足が震える
Rigidity 固縮(こしゅく) 筋肉がこわばり身体がスムーズに動かなくなる
Akinesia 無動(むどう) 動きが鈍くなり素早い動きができなくなる
Postual instability 姿勢反射障害 身体のバランスが取りづらくなり転びやすくなる

他にも食べ物が飲み込みづらくなる嚥下障害などがあります。

非運動症状

自律神経障害 便秘、排尿障害、起立性低血圧
精神症状 うつ、不安、パニック、幻覚、妄想
睡眠障害 不眠、日中の眠気
感覚障害 嗅覚障害、異常感覚
その他 疲労、倦怠感

他にも食べ物が飲み込みづらくなる嚥下障害などがあります。
運動症状以外の症状も存在します。これらの非運動症状は運動症状よりも以前に出現しますが見逃されることが多いです。

パーキンソン病の重症度分類

パーキンソン病は症状が徐々に進行していく病気ですが、病気の進行速度には個人差があります。指標としてHoehn & Yahr(ホーエン・ヤール)の重症度分類が広く用いられ、進行度によって5つに分類されます。

ステージ1 身体の片側にのみ手足の震えや筋肉のこわばりが現れる。
ステージ2 身体の両側に手足の震えや筋肉のこわばりが現れる。
ステージ3 姿勢やバランスが保てなくなり活動がやや制限される。
ステージ4 日常生活に介助が必要になる。
ステージ5 移動に車椅子が必要になり、寝たきりになる。

パーキンソン病の治療

パーキンソン病は脳内のドーパミン欠乏が原因で起こるため、薬によってドーパミンの働きをいかにして補うかが基本的な考え方になります。

ドーパミン自体を直接飲んでも脳には届かないため、その前駆物質であるレボドパを服用します。レボドパは腸から吸収され血液脳関門を通って脳内へ移行し、ドーパミンに変換されます。他には科学的に合成されたドーパミンによく似た物質であるドパミンアゴニストや脳内でドーパミンを分解する酵素の働きを抑えるMAO-B阻害薬、血管内でレボドパを分解をする酵素の働きを抑えるCOMT阻害薬などがあります。

最近では脳に電極を埋め込む脳深部刺激療法(DBS)やカセットに入ったレボドパを直接小腸に送り続けるレボドパ持続経腸療法(LCIG)なども行われるようになってきています。

パーキンソン病に関しては残念ながら根治的な治療方法は発見されていないため、いかに現在の機能を維持し、症状の進行を緩やかにするかが大切です。そのため、上記のような治療に加えて、効果的なリハビリを継続することが現時点では有効な手段であると考えます。

パーキンソン病の方はバランスに問題を抱えている方が多く、転倒による恐怖から円背姿勢をとり、重心を下げていることが多いです。重心を低くすることは姿勢を安定するためには有利に働くかもしれませんが、その分動き出すことが苦手になり、運動を行ううえでは不利に働きます。

固縮と呼ばれる筋肉の硬さも大きく影響し、背骨が伸びづらくなり徐々に可動域制限に繋がります。二次的に筋力低下が起こり、体を持続的に伸ばすことが出来なくなるという悪循環を引き起こします。

上記の理由からパーキンソン病のリハビリに関しては基本的に①伸ばす(伸展)、②捩じる(回旋)という2つの動きの改善が大切です。

①に関しては、座ったり立った姿勢の中で重力に抗するように体や首を伸ばすことを意識して行います。うつ伏せや四つ這いの姿勢を取ることで背筋を伸ばしたり、背筋を働かせることも重要です。また体が上手に伸びるためには、両側の肩甲骨の位置のことを考える必要があるため肩関節や手のリハビリを行うこともあります。

②に関しては、寝返りや起き上がりなどを通じて、回旋運動を行い体幹の柔軟性を得るとともに左右の背筋の協調的な働きを促すことも重要なポイントとなります。