脳卒中後遺症にお悩みの方へ|リハビリを始める時期や、改善の可能性について

脳卒中後遺症にリハビリが有効な理由

脳の血管が破裂したり(脳出血・くも膜下出血)、閉塞によって神経細胞が壊死(脳梗塞、ラクナ梗塞)してしまう病気の総称を脳卒中と呼び、後遺障害として様々な症状が現れます。

運動を司る神経を損傷すると手や脚が動かしにくくなったり(麻痺)、記憶や注意力、言葉を司る神経の障害によって、思考力など脳の一部の働きが乏しくなってしまう(高次脳機能障害)など、症状は多岐に渡ります。

脳卒中の後遺症にはリハビリが有効とされており、リハビリの目的は大きく3つに分かれます。

①脳の機能を回復する 神経可塑性について

損傷した神経の周囲にある神経細胞たちが障害された機能を補うべく、新しい回路を作り出す性質のことを可塑性と呼びます。

神経系は外界の変化に対して柔軟に対応できるよう機能や構造を変えることが可能で、神経系の活動が強く、かつ頻繁に要求されることで強化、使わなければ弱化していきます。

発症によって身体の動きや思考力が弱ってしまうと、日常生活の中で障害された機能を使っていくことは多くのケースで難しく、放置していると神経系の働きが弱くなってしまう恐れがあります。

リハビリでは脳にとって常に新鮮な感覚や適切な難易度の課題を与え、サポートや手がかりをもとに動作や思考などを繰り返していきます。

上達がみられた機能は、段階に応じて生活場面へ汎化させていくことで、リハビリ以外の時間での症状改善も並行していきます。

②残存機能の強化

障害が及んでいない部分の強化も、リハビリにおいては重要な役割を持ちます。

全身的な筋力やベースとなる心肺機能のトレーニングは、一人で外を散歩できるようになる、一人で電車に乗って通勤できるようになる、といった長距離歩行に関する目標を持つ場合には入念にトレーニングされます。

また、右半身と左半身、あるいは上半身と下半身のコンビネーションによって生まれてくる姿勢や運動の制御能力は、バランスの余力を生み、動作スピードやパフォーマンスの向上に強く影響します。

手の麻痺の重症度等によっては、非利き手で箸や書字、パソコン操作を練習するなど利き手の交換に向けた練習を行うこともあります。

③代償手段の確立

①の項目で書いた通り、神経系は使えば使うほど強化される性質を持ちます。日常生活の中では、どんどん麻痺側の能力を活用していくことが症状改善の早道となりますが、症状によってはお一人での運動や行動に危険が伴う場合も少なくありません。

以下のような例では、個別的な症状に応じた代償手段を用意することで、いくつかの課題をクリアすることが可能です。

・「歩けないよりは杖を使ってでも歩きたい」と判断した場合には杖や歩行補助具を使って安全に歩きながら足腰を強化していく。

・「手すりをつければ一人でトイレに行けそう」という場合は、手すりを壁に設置する。

・言葉の出にくさ(失語症・構音障害)がある方でも意思表示出来るよう、絵カードを利用して指さしで意思表示してもらう。

症状やパーソナリティ、ご本人を取り巻く環境は個別的であるため、脳卒中のリハビリに関わる有資格者や福祉用具等に知見の深い支援者が、代償手段の提案を行う機会が多いかと思われます。

提案にあたり、ご本人が出来る事と難しい事、工夫によって出来るようになりそうな事を見つけ出すのもリハビリの大変重要な役割です。

脳卒中の後遺症にお悩みの方がリハビリを始める時期

72時間以内にリハビリテーションを始めたグループは入院期間が短く、歩行能力が高いという報告[1]があるほか、早期から介入したグループと遅延介入のグループでは予後に差が出る[2]という事も示唆されており、脳卒中のリハビリは早期から開始することが望ましいとされています。

多くの場合、発症時に半身の動かしにくさや呂律が回らなくなるなどの異変を感じる方が多く、かかりつけの受診や救急搬送、意識が混濁した状態での発見等から病院に搬送されます。

病院では早期からリハビリが開始され、多くの方は体調が安定してくれば回復期リハビリテーション病棟と呼ばれる、リハビリ専門の病院に移り、1日当たり最大180分間のリハビリを受けることが可能となります。(高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害で最大180日入院可能)

回復期リハビリテーション病棟の退院後は、自宅や入居施設にて介護保険でのリハビリを実施することとなります。

介護保険のリハビリにはデイサービスや訪問リハビリ等がありますが、脳卒中後遺症の改善を目指すには頻度・時間・専門性に課題を抱える場合がほとんどです。

詳しくはこちら →  保険内と自費リハビリの違い

当施設の脳卒中後遺症に対するリハビリ内容


[3]より引用、一部改変

これまでは「発症6か月以降は治らない」という事が通説とされていましたが、近年、「発症から6か月以降の脳卒中後遺症でも症状の改善がみられる」という研究報告がいくつも出てきています。

傾向としては、長時間かつ集中的なトレーニングによって機能の改善が認められると述べられているものが多いのですが、制度上の問題で介護保険リハビリで後遺症の本質的な改善を実現するにはかなりのハードルの高さがあります。

当施設は疾患名や発症からの経過年数に関わらず、高度な技術を持つ脳卒中専門の療法士が60~90分間のリハビリを週2~3回以上の高頻度で実施します。

“ハンドリング”と呼ばれる技術で姿勢と運動をコントロールしながら、科学的根拠に基づいてリハビリを行い、6か月の壁を乗り越えるお手伝いをいたします。

詳しくはこちら → haRe;Azのリハビリ

まとめ

結論として、リハビリは出来るだけ早い段階で開始するのが望ましいと言えます。

神経系の可塑性が高まりやすい6か月間は病院での集中的な加療、その後は退院直後から自費リハビリを開始できると、発症6か月以降の症状改善が持続する可能性があります。

当施設では、お気軽に専門的な自費リハビリをお試し頂けるよう、体験コースを用意しておりますので、ご興味がありましたらお気軽にお申込み下さい。

詳しくはこちら → 体験プログラムについて

参考文献

Hayes, S. H., and S. R. Carroll. 1986. “Early Intervention Care in the Acute Stroke Patient.” Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 67 (5): 319–21.

[2]Biernaskie, Jeff, Garry Chernenko, and Dale Corbett. 2004. “Efficacy of Rehabilitative Experience Declines with Time after Focal Ischemic Brain Injury.” The Journal of Neuroscience: The Official Journal of the Society for Neuroscience 24 (5): 1245–54.

[3]Hatem, Samar M., Geoffroy Saussez, Margaux Della Faille, Vincent Prist, Xue Zhang, Delphine Dispa, and Yannick Bleyenheuft. 2016. “Rehabilitation of Motor Function after Stroke: A Multiple Systematic Review Focused on Techniques to Stimulate Upper Extremity Recovery.” Frontiers in Human Neuroscience 10 (September): 442.