脳卒中を予防するには
日本人の3大死因に数えられる脳卒中
厚生労働省の調査によると、令和2年(2020年)度に亡くなった方のうち7.5%(10万2956人)が脳卒中が原因によるものとされています。
再発しやすい疾患のひとつであり、発症初年度の再発率は12.8%とされていますが、年々発症する確率が増加する傾向にあり、10年以内の累計罹患率(10年以内に再発する確率)は51.3%と言われています。[1]
初回発症時と比べ、再発時の方が重篤な後遺症が残りやすい傾向であるため、再発予防はとても大切な課題となります。
発症を回避するためには原因を知り、リスクを回避することが重要です。
脳卒中が起きる原因
脳卒中の主な原因は動脈硬化とされており、高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙などに起因する生活習慣病が要因となっていると言われています。
高血圧
高血圧とは、血圧が140/90mmHg以上を指している状態と定義されており[2]、血圧が高めの方は脳卒中発症のリスクが高くなるとされています。
高血圧では全身の血管に絶えず負担がかかってしまい、血管は弾力を失ってしまいます。そうした状況では、血管の中が細くなり血流を阻害してしまったり、最悪の場合破れたり詰まったりしやすくなります。
高くなってしまった血圧を下げるには、塩分制限や脂質(飽和脂肪酸)の摂取を減らす一方で、全粒粉の穀物や果物、野菜、低脂肪乳製品を中心とした食生活の改善が効果的です。[3]
糖尿病
糖尿病は血糖値をさげるインスリンというホルモンの分泌量が不足したり、ホルモンの働きが悪くなることで、血糖値が高い状態が長期間続く病気です。
高血糖になると、脳の血管が傷つきやすくなり、傷ついたところにプラークと呼ばれる塊が形成されます。プラークは血管内を圧迫し、血流速度が遅くなってしまうと脳内の血流が途絶えてしまう“脳梗塞”が発症しやすくなります。(非糖尿病者の2~4倍程度)[4]
日本人は欧米人に比べ、インスリンの分泌量が少ない傾向にありますが、食生活の欧米化が進んだことで摂取カロリーの増加が顕著となり、近年では糖尿病を発症する方が増えています。
食事を規則正しく、1日3回取り、食べ過ぎないように注意してください。
脂質異常症
脂質異常症とは、血中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高い、あるいはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態のことを指します。
血中にLDLコレステロール多くなると血管内膜にコレステロールが入り込み、やがて脂肪やコレステロールで形成された沈着物が血管に張り付きます。
これらの沈着物はプラークと呼ばれる塊となり、血管内を狭窄させたり(狭めたり)、血流を阻害しやすくなります。これらが脳内に生じてしまうと最悪の場合、脳梗塞を引き起こします。
脂質異常症の主な原因は、運動不足や偏った食事バランス、肥満などが挙げられます。
健康診断にてLDLコレステロールの値が高いと指摘を受けた方は特に、脂肪の摂取を減らす必要があり、豆類や芋類、海藻類、キノコ類、根菜類など、コレステロール値を下げる食品を積極的に摂取していくことが推奨されます。
不整脈
心臓の拍動をコントロールする器官にトラブルが生じると拍動が一定のリズムを保てなくなり、不整脈が生じます。
拍動が早すぎたり遅すぎてしまう心臓内に血栓が生じやすくなり、それが脳へ至る血管に詰まってしまうと、“心原性脳塞栓症”と呼ばれる脳梗塞”を発症します。
不整脈が生じている場合、外科手術やペースメーカーの設置、場合によっては抗凝固薬(血栓が出来にくくなる薬)による血栓予防が提案されることが一般的です。しかし、血圧が高すぎる方が抗凝固薬を服薬すると、“脳出血”を発症しやすくなる場合があるため注意が必要です。かかりつけ医の指導を守り、薬の飲み忘れ等がないようにご注意ください。
不整脈が生じる代表的な疾患としては“心房細動”が挙げられ、これを予防するには高血圧や肥満の改善、アルコールやカフェインの過剰摂取を控えるほか、適度な運動が推奨されます。
喫煙習慣
タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、血管を収縮させたり、心拍数の増加や血圧の上昇などを引き起こします。また動脈硬化や心筋梗塞に対し強い悪影響を及ぼすと言われており、1日1本のペースでも発症リスクが1.4倍以上にもなると言われています。
禁煙者と比較して、アジア人の喫煙者は脳卒中発症の可能性が2倍以上になると述べられていますが[5]、3年間の禁煙を継続すると急激に発症リスクが低減するとされ、禁煙期間が長ければ長い程リスク低減に効果的との報告もあります。
本格的な禁煙を目指したい方は、近隣の禁煙外来へご相談ください。
脳卒中の前兆は?初期症状は?
- 突然出現した言葉の出にくさ、ろれつが回らない
- 顔、手足のしびれ、または脱力感。右側もしくは左側の手足
- 突然出現した片目、あるいは両目が見えない、見えにくくなる症状。
- 突然出現しためまい 歩けなくなるほどのふらつき
- 原因不明の激しい頭痛や耐え難い眠気
これらの症状が、突然に起こるのが脳卒中の特徴です。数分で治まることもありますが、決して侮ってはいけません。
すぐに専門の医療機関を受診しましょう。