脳卒中とは
脳卒中は頭の中の血管に起こる病気で、その影響により身体に様々な障害が現れます。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳動脈瘤が破裂する「くも膜下出血」 の3つを総称して「脳卒中」と呼びます。
脳卒中は頭の中の血管に起こる病気で、その影響により身体に様々な障害が現れます。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳動脈瘤が破裂する「くも膜下出血」 の3つを総称して「脳卒中」と呼びます。
脳卒中の語源は「卒然として中(あた)る」という意味です。「卒」は卒然=突然、「中」は中(あた)る=当たるという意味で、突然悪い風にあたって体が動かなくなり倒れるような病気である、というところからきています。
英語でも脳卒中のことをStroke(ストローク)=一撃と呼びます。後遺症が残ることで昨日まで行えていたことが突然できなくなり、それまでの生活が一変してしまいます。脳卒中は日本人の死亡原因の第4位、要介護になる原因 の第2位の病気です。
多くは損傷した大脳半球と反対側の手足に、動かしづらさが出現することから「片麻痺」と呼ばれます。これは脳の運動神経が延髄の錐体という場所で左右に交差しており、損傷側と反対側に症状が起こるためです。(例:右半球の損傷によって左片麻痺が生じます)
運動麻痺は、一般的には力が入らずにだらっとした弛緩性から始まり、徐々に緊張が亢進し、痙性(けいせい)麻痺に移行することが多いです。痙性は麻痺した手足が緊張により突っ張ったり、こわばったりする現象です。
上肢はウェルニッケマン肢位と呼ばれる屈曲位を取りやすく、下肢は反対に伸展位で足関節は底屈・内反を伴うことが多いです。強い痙性は二次的な筋肉の短縮や関節の拘縮を招く原因になります。痙性のメカニズムに関しては医学的に明らかになっていない部分は多々ありますが、積極的な使用を促すことで改善したという事例が数多く報告されています。
体性感覚は表在感覚と深部感覚の2つに分類されます。
表在感覚は触覚の他、温痛覚などの皮膚表面の感覚であり、深部感覚は手足がどこにあるか、どの方向を向いているかを検知する感覚を指します。表在感覚の問題では、触れた感触が分かりにくくなるなどの他に、痺れや痛みを感じるなど異常感覚と呼ばれるものもあります。
感覚障害をお持ちの利用者様からは、
等といった感想をお聞きします。
感覚障害が重度の方は感覚の低下を眼(視覚)で補おうとして、歩行の際にはつま先が引っ掛からないかどうかを気にして常に下を向いていることがあります。また、手の場合は柔らかいものや、細かいものをつまむ動作の際に難しさを感じることがあります。
言語障害には失語と構音障害の2種類があります。
言語中枢からの指令がうまく届かないため言語が出づらい(麻痺がないこともある) 構音障害:言葉を話すために必要な唇、舌、声帯などの発声・発語に関わる器官の麻痺があり上手く話せない症状
言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの知的な機能に障害が起こった状態を差します。注意・集中力の低下、新しいことが覚えられない、感情や行動の抑制が効かなくなるなどの精神・心理的症状が出現し、周囲の状況に合った適切な行動が選べなくなり、生活に支障をきたすようになります。外見からは分かりにくいため、周囲の方から理解を得られにくく、誤解を受けやすい症状です。
高次脳機能障害には主に注意障害、見当識障害、病識欠如、失語、失行、失認、半側空間無視、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
再就職や自動車運転の再開などで問題になることが多いため、当施設では関連施設と連携を取りながら脳卒中後遺症者の支援を行っています。
脳には可塑性という性質があります。英語ではPlasticityといい、Plastic=プラスチックの語源となっています。プラスチックが熱を加えるとどんな形にも変形できるように、可塑性は「形を変えることができる」「変化する」といった意味を持っています。
残念ながら脳卒中によってダメージを負った細胞は2度と再生することはありません。しかしこの可塑性という性質により、残存した他の部位が代替的な役割を果たし、新たな神経回路を形成することで再び運動が行えるようになるのです。
例えば、A地点からB地点に行くための幹線道路が壊れてしまったとします。B地点に行く道が1本しかなくてその道が復旧しないとしたらどうしますか?きっと脇道を作ってB地点に辿り着くようにするはずです。確かに大きくて真っすぐな幹線道路を走るよりも目的地に着く時間はかかります。リハビリを行うという事はその脇道をいかに快適で太くて真っすぐな道にするか、という作業に似ています。
よく「リハビリは何度も繰り返し行う必要がある」という言葉を聞きます。確かに運動学習のために適切な頻度・回数は必要です。ただし、それには良い運動や良い感覚の経験を積み重ねる必要があります。ただ自分のやり方・方法で漫然と繰り返しても効果はありません。不適切な運動は症状の悪化を形作り、症状を助長してしまうこともあります。
例えば、食事は「好きなものを好きなだけ食べればいい」というものではありません。必要な栄養素を必要な分だけ摂取する必要があります。身体に悪い食べ物を食べ続けていたら不健康になることもあります。リハビリも同様で適切な運動パターンを学習するためには、正しい姿勢や体の使い方を経験していただく必要があります。
代償とは新しい方法で以前の運動を行うこと。または、道具や環境を整えることで目的とする動作を補完して目的を達成することを指します。
例えば、元々右利きの方が右片麻痺になり、スプーンを使用した食事動作獲得を目標にするとします。この際、左手に利き手交換してしまえば、比較的短期間での目標達成が可能となります。反対の手でスプーンを扱うことはそれほど難しい課題ではないでしょう。病院から早く退院することを目標にするのであれば、代償的な動作獲得は有利に働きます。
しかし代償によって獲得した動作は、本来使うべきであった元々の機能を使わないという点において、以後の改善を制限してしまう恐れがあります。その方がどの程度改善するか、どのくらい変化する可能性があるかを潜在性(せんざいせい)と呼びます。代償の悪い点は、その潜在性を覆い隠してしまう恐れがあることです。
歩行の際に麻痺側の骨盤を持ち上げ、外側から回すように振り出すぶん回し歩行もひとつの代償手段です。本来使われるべき筋肉を使わないことで、他の筋肉や関節運動を使用して脚を振り出すという動作を達成しているのです。身体の一部分に過剰な負担を強いることで、筋肉の痛みや関節の可動域制限に繋がることもあります。
また、代償による動作は定型的なパターンに陥ることで「環境や場所が変わるとできない」といった問題を引き起こします。「病院では出来たのに自宅復帰したら出来なくなった」「家ではできるのに外出先ではできない」といった問題は、このような適応性の低さが根本にあるのかもしれません。
我々の動作はそれぞれ共通した要素を持っており、その要素の組み合わせによってひとつの運動を構成しています。そのため再獲得した機能は他の動作にも汎化(はんか)します。麻痺手でスプーン動作を獲得すれば、字を書いたり、ボタンを押したりといった他の動作も可能になるかもしれません。また歩行時のぶん回しが改善すれば、より股関節周囲の筋肉が活性化し、階段昇降などのより高度な課題にも良い影響があると考えられます。
脳卒中に関しては、発症から3か月までは自然回復による機能改善が著しい時期であり、6か月まではそれが続きます。回復期リハビリテーション病棟の入院期間が最長180日間と定められ、集中的なリハビリが行われるのはこのためです。
徐々に自然回復のスピードは落ち着いてくるため、6か月以降は機能改善が停滞する、いわゆるプラトーになる(平坦化する)と言われてきました。
しかしながら近年、発症半年以降の片麻痺者の機能改善に関する論文も複数報告されており、そのほとんどが週3回以上の集中的なリハビリを受けているケースで、半年以降の症状改善に関する科学的根拠も少しずつ集まってきています。
実際、当施設の利用者様の中には、両手での軽作業が可能となり復職した方、屋外歩行時に着用していた下肢装具を卒業した方、病院では機能全廃とまで言われた手の症状が改善し、ハンドルを持って自動車の運転が可能になった方もいらっしゃいます。
右記の論文のグラフでは6か月以降の改善を示しており、2本の点線が上下にそれぞれ伸びています。
これは6か月以降の改善には時間経過だけではなく、リハビリの種類や方法と社会参加が重要であることを意味しています。神経系の自然回復が途絶えた6か月以降は「誰とどんなリハビリを行うか」が大切です。
神経系の自然回復が途絶えた6か月以降は「誰とどんなリハビリを行うか」が大切です。
脳の後遺症は、「残るものだ」「治りづらい」と諦めていませんか? 私たちは、脳梗塞、脳出血や脊髄損傷(中枢神経疾患)専門のリハビリ施設です。病院などのリハビリでは、麻痺した側の機能はあきらめて、ほかの動く部分を強化することを重点的に行う傾向があります。 リハビリを行うにあたって、脳疾患による麻痺は「残る」「治りづらい」と考えているためです。 例えば・・・
病院では退院を目指さなくてはいけないので、右手が麻痺したら、左手で箸をもつ訓練 麻痺していない方の手で手すりを引っ張って一人で立つための訓練、装具を使って歩く訓練など「早く退院するための身体づくり」に重きがおかれてしまう。
1日でも早く病院からご自宅に戻るためにはこれらの方法は有効かもしれません。しかし将来的に麻痺した手足を何とかしたいとお考えであれば、これらの手段は現在の状況を悪化させてしまう恐れもあります。
非麻痺側にせよ、麻痺側にせよ、過剰な努力を伴った運動というのは麻痺側の連合反応(意図しない手足のこわばり)を誘発します。また、痙性を増悪させることもあり、結果的に異常な筋緊張で身体を硬くして、より動きにくい身体になっていくことも珍しくありません。
脳卒中後の運動パターンはひとかたまりになりやすく、常に同じ動き・パターンを繰り返す傾向があります。同じ刺激、同じ運動、同じ生活習慣を繰り返していたら変化するべきものも変化しません。
自身の運動パターンを変化させ、麻痺した手足が再び動くようになるためには、セラピストと二人三脚になり、ひとりではできないような運動を経験する必要があります。
ひとりひとり身体の状況は異なり、経験してきた仕事やスポーツ、趣味や得意なことも異なります。目標が違えば、その方にとって必要な身体の機能も異なってきます。身体を伸ばすため、脚を伸ばすためにその課題を選ぶのではなく、達成したい課題があるからその課題を選択した方が効果があります。課題はご本人にとって意味のあるものでなければなりません。
難易度が高すぎると身体をこわばらせてしまうし、反対に簡単な課題をただ繰り返しても意味がありません。目標はその人にとって、できるかできないか、ギリギリの難易度を選択する必要があります。
最大の能力を発揮するためには運動開始前や運動時の姿勢が安定していなければなりません。また可能な限り代償が起きないように常に姿勢に配慮する必要があります。我々は昇降式のベッドやテーブル、タオルやクッション、ボール、マジックベルト、ヨガブロックなど、ありとあらゆる道具を用いて姿勢を整え、支持基底面(身体を支えている場所)を強調します。
ハンドリングとは「操作する」「手で触れる」という意味で、セラピストの手を通して効率の良い運動の方向やタイミングを伝える為に用います。
緊張により硬くなった筋肉は適切な筋活動を生み出しにくい為、徒手による刺激と共に細やかな運動を行い、柔らかい筋肉を取り戻します。
弛緩して弱くなった筋肉にはセラピストの手を用いて筋肉に張りを与えるように刺激し、収縮が起こりやすい状態にします。そのうえで関節の位置や配列を修正するような運動を実施する事で、最大のパフォーマンスを発揮しやすい状況を整えます。
練習のはじめの段階ではセラピストの誘導を必要とするような運動でも、ご自身による制御を取り戻し始めると、徐々に手を緩めたり、接触・刺激する場所を変えて、誘導が無い状況でも運動を再現できる場面を目指します。
ご本人とセラピストの相互のやりとりの中で情報が適切に受け取られ統合されると、自身の身体や運動のイメージが変化します。すると運動の再学習が起きて、過剰な努力を伴わない滑らかな運動が可能になります。
僅かなきっかけさえあれば成功し、それまで身を結ばなかった努力も報われる日がきっと来ます。
とのお声を頂いております。
今のリハビリに満足できていない!という方は、ぜひご連絡ください。